「インボイス制度」、何度も聞いたけど結局なんなのかよく分からないまま今に至る、って人、相当多いと思います。
ニュースの解説を読んでも、「適格請求書発行事業者がうんぬん」とか出てきて、3行で離脱する。あれは仕方ない。
ということで、消費税のしくみから順番に、たぶん10分でスッキリするように説明します。
インボイス制度とは、「税務署に登録した事業者(インボイス発行事業者)だけが発行できる、税率と税額を書いた請求書」のしくみ。
これをもらえない相手から仕入れると、買う側が払った消費税を差し引けなくなる(経過措置の期間は一部だけ差し引ける)。だから、登録していないフリーランスや小さい個人事業主が一斉に困った。
順番にいきます。まず「消費税」のしくみ
消費税の話を抜きにインボイスは語れません。ここを5分だけ我慢してください。
消費税って、コンビニで100円のノートに10円ついて110円払う、あれですよね。
あの10円、コンビニが懐に入れてるわけじゃない。コンビニはいったん預かって、後で国に払ってる。
ここまではみんな知ってる。問題はここから。
会社は「もらった消費税」から「払った消費税」を引いて、差額を国に納める
コンビニも、商品を仕入れるとき消費税を払ってます。
コンビニが国に納める消費税は、もらった分から払った分を引いた差額(標準税率10%の商品の例。持ち帰りの食品は軽減税率8%)
コンビニはお客さんから15円もらって、仕入れ先には10円払ってる。
差額の5円だけ国に納める。
これを「仕入税額控除(しいれぜいがくこうじょ)」と言います。漢字が固いけど、意味は単純で「払った消費税を、納める消費税から差し引ける」ってだけ。
次。「免税事業者」って何?
ここがインボイスの主役です。
消費税のルールには、売上が1000万円以下の小さい事業者は、消費税を国に納めなくていいっていう例外があります。
ただしこの「1000万円」は、今年の売上ではありません。原則として2年前(基準期間)の課税売上高で判定します。前年の前半の売上などで課税になる場合もあるので、細かい判定は国税庁の案内を確認してください。
これを「免税事業者」と言います。フリーランスや個人商店の多くが、これに該当してました。
なんで免税にしてあげてたの?
消費税の計算と申告は、小さな事業者にとってけっこうな事務作業。「売上1000万円もない人にやらせるのは酷だよね」という配慮で、長年こういうルールでした。
つまり、こういう状況が普通にあった:
- フリーランスのイラストレーターAさん(年収500万円)
- 報酬として「10万円 + 消費税1万円 = 合計11万円」を会社からもらう
- でも国に消費税を納める必要はない。1万円はAさんの懐に入る
この「手元に残る消費税」のことを「益税(えきぜい)」と呼ぶ人もいます。ただ、これは制度が認めている免除なので、免税事業者がズルをしているわけではありません。
なぜインボイス制度ができたのか
国税庁が説明している目的は、2019年に消費税が10%と8%の2つの税率になったので、取引ごとに「どの税率で、税額がいくらか」を正確に分かるようにするためです。請求書に税率と税額をはっきり書かせて、買う側が差し引ける消費税を正しく計算できるようにする。
一方で、結果として免税事業者が取引で不利になることから、「実質的に免税事業者への増税だ」という批判も強くありました。公式の目的と、それに対する評価は分けて見ておくと、ニュースの議論が追いやすくなります。
インボイスは「特別な請求書」
インボイスとは、ざっくり言うと「消費税をちゃんと納めますよ、と国に登録した事業者だけが発行できる、特別な請求書」のこと。正式名称は「適格請求書(てきかくせいきゅうしょ)」。
ポイントは2つ。
- インボイスを発行できるのは、税務署に登録した事業者だけ。登録すると消費税を申告・納付する側(課税事業者)になる。免税事業者はそのままでは発行できない。
- 買う側は、インボイスをもらわないと原則として「仕入税額控除」ができない。つまり、払った消費税を差し引けない(経過措置の期間中は一部だけ差し引ける)。
2つ目がでかい。何が起こるか、図にします。
会社の負担:今までどおり
- 払った消費税は差し引ける
- 差額だけ国に納める
- 会社的に問題なし
会社の負担:増える
- 払った消費税を差し引けない
- その分、自社で多めに納めるハメに
- 会社的に「損」
具体例で:
- 会社がフリーランスAさん(免税事業者)に10万円 + 消費税1万円を払った
- 会社はその仕事の売上で20万円 + 消費税2万円をお客から受け取った
- 本来は「2万円 - 1万円 = 1万円」だけ国に納めればよかった
- でもAさんがインボイスを出せないので、1万円が差し引けない
- 会社は2万円まるまる国に納めることになる
- 会社は実質1万円余計に払う羽目になった
※これは経過措置を考えない、しくみを見るための例です。実際は後で説明する経過措置で、2026年10月以降の仕入れなら1万円のうち70%(7,000円)は差し引けます。
ここで会社は思います。「Aさんに頼むの、やめよう。インボイス出せる人にお願いしよう」と。
だからフリーランスが怒っていた
この流れ、フリーランス側から見るとこうなります。
- インボイスを出すには、免税の扱いをやめて、消費税を申告・納付するほうの側になるしかない
- 払うほうになると、受け取った消費税の一部を国に納めることになり、手取りが減る。どれだけ減るかは、売上・経費・計算方法(一般課税・簡易課税・特例)で変わる
- でも登録しないと、取引先から値下げを求められたり、切られたりするかもしれない
- どっち選んでも、結局しんどい
これが、2023年10月の制度スタート前後で「インボイス反対!」の声が上がりまくった理由です。
正直、けっこうエグい話
「免税はもともと特例だったでしょ」というのは正論なんだけど、長年それで成り立ってた人にとっては、ある日いきなり収入が目減りするのと同じ。怒るのは無理もない、というのが正直なところです。
緩和策(経過措置と特例)
急に切り替えると影響が大きいので、緩和策があります。買う側の緩和策と売る側(登録したフリーランス)の緩和策は別物なので、分けて見てください。
買う側:免税事業者からの仕入れでも、一部は差し引ける
2026年度の税制改正で、期間と割合が見直されました(2026年10月14日確認)。
| 期間 | 免税事業者などからの仕入れで差し引ける割合 |
|---|---|
| 2023年10月〜2026年9月 | 80% |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70% |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% |
| 2031年10月以降 | 0%(完全に切り替わる) |
改正前は「2026年10月から50%、2029年10月から0%」の予定でしたが、段階がゆるやかになりました。あわせて、1つの免税事業者からの仕入れでこの措置を使える上限が、年10億円から年1億円に下がっています。
売る側:登録した小さな事業者の納税を軽くする特例
- 2割特例:免税事業者からインボイス登録した人は、納める消費税を「受け取った消費税の2割」にできる。2026年9月30日を含む課税期間まで(個人事業者なら2026年分の申告まで)
- 3割特例(新設):2027年分・2028年分は、2年前の売上が1000万円以下などの条件を満たす個人事業者なら「受け取った消費税の3割」にできる。法人は対象外
どちらも条件があるので、自分が使えるかは国税庁の改正の案内で確認してください。全体として、完全移行までは段階的。でも最終的には、登録していない事業者は取引で不利になっていく方向です。
まとめ:これだけ覚えれば話についていける
- 消費税は「もらった分 - 払った分」を会社が国に納める
- 2年前の売上が1000万円以下などのフリーランスは、納税が免除されている(免税事業者)
- インボイス = 「消費税を納める登録をした人だけが出せる、特別な請求書」
- 買う側は、インボイスをもらわないと「払った消費税を差し引けない」(2026年10月〜2028年9月の仕入れは70%まで差し引ける経過措置あり)
- なので、フリーランスは「登録して納税するか」「取引を失うリスクをとるか」の選択を迫られた
これがインボイス制度のぜんぶ、というと言いすぎですが、ニュースで話についていくにはこれで十分です。
消費税のしくみそのものや、個人事業主・副業の確定申告・確定申告の記事とあわせて読むと、フリーランスのお金まわりが一通りつながります。
制度の一次情報は 国税庁 インボイス制度特設サイト にまとまっています。登録申請の様式や、経過措置の期限もここが正確です。
ここでは、簡易課税の計算方法や特例の細かい条件は省略しました。実際に登録するかどうかで悩んでいるなら、税理士か、税務署の無料相談に行くのが一番確実です。