会社員なら給与明細に「雇用保険」と引かれています。
でも、
「これって何のための保険?」「辞めたら絶対もらえる?」「いつから・いくらもらえる?」
を、退職を考えたときに困らないよう整理します。
雇用保険とは、「失業や育児・介護で働けなくなった時に給付を出す国の保険」です。
最大の柱は 失業手当(基本手当)。退職して仕事を探している間、給与の50〜80%が最大330日まで支給されます。
給与から自動で天引きされ、加入していれば 原則1人1回ずつ もらえる権利が積み立てられていきます。
雇用保険の正体
雇用保険は、「働けなくなったときの生活を守る国の保険制度」 です。
カバーする内容:
- 失業手当(基本手当):失業中の生活費補助
- 育児休業給付金:育休中の給与代替
- 介護休業給付金:家族介護で休んだとき
- 教育訓練給付金:資格取得・スキルアップ支援
- 再就職手当:早く再就職した時のボーナス
「失業手当」が一番有名ですが、実は他にもたくさんの給付があります。
誰が加入しているか
雇用保険に加入しているのは:
- 正社員:原則全員
- パート・アルバイト:週20時間以上かつ31日以上勤務見込み
- 派遣社員:契約条件次第
- 役員のみの会社経営者:加入できない
- 個人事業主:加入できない
会社員なら気付かないうちに加入しています。給与明細の「雇用保険料」がそれです(2026年度は給与の0.5%が本人負担。建設業などは0.6%)。
失業手当(基本手当)の条件
退職したら誰でももらえるわけではありません:
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 加入期間 | 過去2年間で12ヶ月以上加入(自己都合の場合) |
| 加入期間(会社都合) | 過去1年間で6ヶ月以上 |
| 求職活動 | ハローワークで求職申込み+求職活動の継続 |
| 働く意思 | すぐ働ける状態であること |
| 年齢 | 65歳未満(65歳以上は高年齢求職者給付金) |
求職活動をしない人はもらえません。「一旦休みたい」「専業主婦になる」場合は対象外です。
自己都合と会社都合の違い
同じ失業でも「もらえるまでの時間」と「もらえる長さ」が両方違います。自己都合で辞めるなら、1〜2か月は無収入で暮らせる貯金を先に用意しておくのが現実的です
失業手当は退職理由で開始時期も日数も変わる
ここが大きなポイント:
転職・キャリアチェンジ
- 給付開始まで 約1か月+7日 の待機
- 給付日数 90〜150日
- 加入期間12ヶ月以上が条件
解雇・倒産・退職勧奨
- 給付開始まで 7日のみ(早い)
- 給付日数 最大330日
- 加入期間6ヶ月以上で条件達成
会社都合のほうが断然有利。会社が辞めさせるために「自己都合扱いで辞めて」と言ってきたら要注意です。
失業手当の金額
ざっくりの計算式:
1日あたり = 退職前6ヶ月の平均給与日額 × 50〜80%
具体例(退職前の月給30万円の場合):
| 月給 | 日額のおおよそ | 1ヶ月(30日)の手当 |
|---|---|---|
| 月給20万円 | 約5,000円 | 約15万円 |
| 月給30万円 | 約6,300円 | 約19万円 |
| 月給40万円 | 約6,700円 | 約20万円 |
| 月給50万円以上 | 上限8,270円 | 約25万円(頭打ち) |
※30〜44歳で離職した場合の目安。上限は離職時の年齢で変わります(2026年8月から:29歳以下7,450円、30〜44歳8,270円、45〜59歳9,110円、60〜64歳7,830円)。毎年8月に見直されます。
給与が低い人ほど補填率が高くなる仕組み(80%)。給与が高い人は50%まで下がります。
給付期間
加入期間と退職理由で決まります:
| 加入期間 | 自己都合 | 会社都合(30歳未満) | 会社都合(45〜59歳) |
|---|---|---|---|
| 1年未満 | × | 90日 | 90日 |
| 1〜5年 | 90日 | 90日 | 180日 |
| 5〜10年 | 90日 | 120日 | 240日 |
| 10〜20年 | 120日 | 180日 | 270日 |
| 20年以上 | 150日 | — | 330日 |
30〜44歳の会社都合はこれより長く、たとえば35〜44歳で勤続10〜20年なら240日です。
長く勤めて会社都合で辞めた人ほど手厚くなります。
申請の流れ
実際にもらうための手順:
- 会社から離職票をもらう(退職後1〜2週間で郵送)
- ハローワークで求職申込み(離職票・マイナンバー・本人確認書類・写真等を持参)
- 7日間の待機期間
- 雇用保険受給説明会に参加(必須)
- 4週間ごとに失業認定(求職活動2回の証明)
- 口座振込で受給
自己都合の場合は、待機のあとさらに原則1か月の給付制限があります。最初の振込まではおよそ 1か月半〜2か月 を見ておくと安心です。なお、2025年4月以降に指定の教育訓練を受けた人は給付制限がなくなります。
求職活動の証明が必要
「家にいた」では認定されません。ハローワークの相談、求人応募、職業訓練の見学などが活動実績として認められます。週に1〜2回はハローワークに行く前提です。
育児休業給付金
雇用保険のもう一つの主役:
- 育休中、給与の 67%(180日以降は50%) を最大2歳まで支給
- 男性も育休取得すれば対象
- 父母とも14日以上育休を取ると、最大28日間は13%が上乗せされて 合計80%(手取りでほぼ10割) になる(2025年4月からの出生後休業支援給付金)
- 申請は会社経由で行う
子育て世帯にとっては失業手当より重要な制度です。
教育訓練給付金
転職・スキルアップを支援する制度:
- 一般教育訓練給付金:受講料の20%(上限10万円)
- 特定一般教育訓練給付金:40%(上限20万円)。資格を取って1年以内に就職すれば最大50%(上限25万円)
- 専門実践教育訓練給付金:50%から始まり、資格取得と就職で70%、さらに賃金が5%以上上がれば最大80%(年間上限64万円)
簿記、宅建、看護師、保育士、プログラミングスクールなど、対象講座は多数。条件は雇用保険加入3年以上が目安です。
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 「退職したら自動で振り込まれる」 | ハローワークで申請が必要 |
| 「失業中ずっともらえる」 | 給付日数の上限あり(最大330日) |
| 「すぐ振り込まれる」 | 自己都合だと1か月半以上は待つ |
| 「専業主婦になっても対象」 | 求職活動が必要なので対象外 |
| 「不正受給はバレない」 | 支給が止まり、不正に受け取った額の最大3倍の納付を命じられる(いわゆる3倍返し) |
まとめ
- 雇用保険 = 失業・育児・介護などで働けない時の生活を守る国の保険
- 失業手当は 自己都合90〜150日 / 会社都合最大330日
- 1日あたり給与の 50〜80%(給与低いほど補填率高)
- 申請は ハローワーク、求職活動の継続が必須
- 育児休業給付金、教育訓練給付金など失業以外の給付も充実
国民年金、健康保険、介護保険と並ぶ、生活を支える社会保険の柱です。
そもそも辞めると言い出せない、という段階でつまずく人が増えていて、そこは退職代行のほうで扱っています。
詳しくは 厚生労働省 雇用保険制度 が一次情報源です。給付制限は 厚生労働省「給付制限期間の見直し」、手当の上限は 基本手当日額の変更、保険料率は 令和8年度 雇用保険料率 で確かめられます(2026年10月14日確認)。