新入社員のとき、上司から「君のKPI何にする?」と聞かれて、
「いや、KPIってなに?」
と聞き返せずに笑顔でうなずいた経験、ある人いると思います。
社会人歴何年たっても、KPIをちゃんと説明できる人ってけっこう少ない。今日それを終わらせます。
KPI(ケーピーアイ)とは、「目標がちゃんと進んでるか測るための、数字で見える指標」のこと。
たとえば「ダイエットで5kg痩せる」が目標なら、KPIは「毎日の体重」や「週ごとの運動回数」みたいな数字です。
まず、KPIは略語。元はなに?
KPIは Key Performance Indicator の頭文字。
直訳すると「重要な、成績の、指標」。日本語で言うなら「達成度を測るモノサシ」みたいな感じです。
ビジネスで「KPI」と聞いたら、「目標までどれだけ進んでるかを数字で見るためのモノサシ」 と頭の中で変換すれば、だいたい合ってます。
具体例で一気にイメージつかむ
抽象的な話を続けても分かりにくいので、たとえ話で。
たとえば、あなたがケーキ屋さんを始めて、「年間の売上1,000万円」を目標にしたとします。
これは大きな目標(ゴール)。でも、毎日「あと残り800万円か〜」って眺めてても、何していいか分からないですよね。
そこで、KPIの出番。年間1,000万円を達成するために、毎日測るべき数字を決めます。
- 1日の客数:50人来てもらう(→月1,500人 → 年18,000人)
- 客単価:1人600円使ってもらう(→年18,000人 × 600円 = 1,080万円)
- SNSフォロワー:月+100人増やす(→翌年の新規客につながる)
この3つの数字がKPIです。ゴール(売上1000万)に向かう途中で、毎日チェックする数字。
ここで重要
KPI は「数字で測れること」がぜったいの条件。
「お客さんを大事にする」「品質を高める」みたいな曖昧なものは KPI とは呼べません(測れないから)。
KGI、KPI、OKR、何が違う?
KGIとKPIはゴールと通過点の関係。OKRだけは性格が違い、100%達成を目指さないのが前提です。同列に並べると混乱します
KGI・KPI・OKRの関係。OKRだけ性格が違う
ビジネス用語、ここで混乱しがち。仲間の用語を整理します。
| 用語 | 意味 | さっきのケーキ屋で言うと |
|---|---|---|
| KGI(最終目標) | Key Goal Indicator | 「年間売上1,000万円」← ゴールそのもの |
| KPI(中間指標) | Key Performance Indicator | 「客数50人/日」「客単価600円」← ゴールに至る数字 |
| OKR(目標と結果) | Objectives and Key Results | 「街でいちばん愛されるケーキ屋になる」+ それを測る指標、というGoogleが広めた手法 |
ざっくり:
- KGI = 最終ゴール
- KPI = ゴールまでの道のりを測るモノサシ
- OKR = KGI+KPIをもう少しモチベーション寄りに進化させたバージョン(最近流行り)
OKR は、Google が広めて世界中で真似されてる
KPIが「数字を達成すれば合格」というドライな感じなのに対し、OKRは「ワクワクする目標」を上に置く。
OKRの立て方やKPIとの違いは、OKRの記事で詳しく整理しています。
職種別のKPI早見表
「うちの部署だと何がKPIになるの?」がいちばん詰まるところなので、よく使われるものを並べます。
| 職種・部門 | よく置かれるKPI |
|---|---|
| 営業 | 商談数/受注率/平均受注単価/失注理由の分類 |
| マーケティング | サイト訪問数/問い合わせ件数/獲得単価(CPA)/ペルソナごとの反応率 |
| カスタマーサポート | 一次回答までの時間/解決率/解約率/満足度スコア |
| 人事 | 応募数/内定承諾率/入社1年後の定着率/有給取得率 |
| 製造 | 不良品率/稼働率/リードタイム/在庫回転率 |
| 飲食・小売 | 客数/客単価/リピート率/回転率 |
| エンジニア | リリース頻度/障害の発生件数/復旧までの時間 |
並べて気づくのは、どれも「数えられること」しか入っていないという点。「顧客満足度を上げる」はKPIになりませんが、「満足度アンケートで5点満点中4.2以上」ならKPIになります。
KPIは多いほど効かなくなる
15個のKPIを追っている部署は、実質何も追っていないのと同じです。人が同時に意識できるのはせいぜい3つ。「これが動けば結果が動く」と言い切れるものだけ残すのが、KPI設計でいちばん難しくていちばん効く作業です。
KPIツリー:目標を分解して原因までたどる
KPIが1個だけだと、下がったときに何をすればいいか分かりません。そこでゴールを掛け算で分解するという考え方が使われます。
分解の目的は、「数字が悪い」を「どこが悪い」に変えること。掛け算・足し算で割っていって、担当者が明日から動かせる粒度まで下ろせたら成功です
KPIツリー:ゴールを分解して打ち手が見える粒度まで下ろす
数字が落ちたとき、分解しておけば犯人が特定できます。分解していないと「気合いで頑張ろう」という会議になる。KPIツリーの価値は、精緻な数値管理よりこの会話の質の差にあります。
いいKPIと、悪いKPI
KPI、なんでも数字にすれば良いわけじゃない。ダメなKPIを設定すると、組織がおかしな方向に動く。
ゴールに本当につながる
- 客数、客単価、リピート率
- 営業の商談数、成約率
- サイトの新規訪問者数、会員登録数
数字遊びになる
- 「営業電話の本数」だけ(質を見ない)
- 「会議の数」(意味のない会議が増える)
- 「SNSのいいね数」(売上につながらない)
特に「営業電話の本数」みたいなKPIを置くと、意味なく電話だけかけまくる組織になります。これは現実によくある話です。
数字を追いかけることが目的化して、本来のゴール(売上、満足度)から離れる現象を、ビジネス用語で 「KPI ハック」「数値の自己目的化」 と呼びます。これがKPIの最大の闇です。
なんでKPI、ここまで広まったの?
「目標を立てる」だけなら昔からあった話なのに、わざわざ「KPI」って言葉が広まったのは、測れないものは管理できない、という考え方が経営の世界でメインストリームになったから。
"If you can't measure it, you can't improve it." (測れないものは、改善もできない)
これはピーター・ドラッカーという経営学者の言葉とされていて、KPI思想の根っこにあります。
つまり、感覚や勘で経営する時代から、数字で経営する時代に切り替わった。その時にちょうどよく使われるようになったのがKPI、ってわけです。
あなたが新入社員で「KPIなに?」と聞かれたら
会社のKGI(年間売上目標とか)を見て、「自分の仕事のどこを頑張れば、ゴールに近づくか」 を考えれば、それがKPIになります。
たとえば営業職なら:
- 商談数(質より量のフェーズ)
- 成約率(量はあるけど質を上げたいフェーズ)
- 顧客単価(既存顧客を深掘りたいフェーズ)
「全部やります!」じゃなくて、フェーズに合わせて1〜3個に絞るのがコツ。多すぎるKPIは追えなくなって全部おろそかになります。
まとめ
- KPI = 目標がちゃんと進んでるか測るための、数字で見える指標
- ゴール(KGI)と一緒に使うのが基本
- 「数字で測れること」が絶対条件
- 悪いKPIを置くと、組織が数字遊びを始めるリスクがある
- 「測れないものは改善できない」というドラッカーの思想がベース
これで「君のKPIなに?」と聞かれたとき、固まらずに済むはず。
仕事関連の用語は インボイス制度 や 社団法人 のような制度の言葉と違って、会社や業界によって解釈が微妙にずれるのが特徴です。自分の会社で言われたら、まず上司に「うちでは何をKPIにしてる?」と聞くのがいちばん早い。
ここでは、SMART原則(KPIを設定するときのチェック方式)など、もう一段踏み込んだ話は省略しました。KPIツリーは上の節で基本の考え方だけ紹介しています。