「うちもOKRを導入する」と言われて、KPIと何が違うのかピンと来ない。
GoogleやIntel、日本でもメルカリなどが使う目標管理の手法、OKR。流行り言葉で終わらせず、中身を整理します。
OKRとは、Objectives and Key Results の略で、「目標(Objective)」と「その達成度を測る成果指標(Key Results)」をセットで決める目標管理の手法のこと。
1つのワクワクする目標に対して、3つ前後の数値で測れる成果指標をぶら下げる。これを会社・チーム・個人で縦につなげて、「全員が同じ方向を向く」のが狙い。
KPIが「管理のための指標」なら、OKRは 「みんなを引っぱる目標」という性格の違いがあります。
OKRの中身を分解する
名前の通り、2つの部品でできています。
Oだけだと掛け声で終わり、KRだけだと意味の分からない数字管理になります。方向(O)と物差し(KR)をセットで置くのがOKR。挑戦的な目標として立てたOKRなら、達成率は6〜7割で良しとするのが一般的です
OKRは「言葉の目標」と「数字の物差し」の2階建て
| 部品 | 意味 | 性格 |
|---|---|---|
| O:Objective(目標) | 達成したい状態。ワクワクする・覚えやすい言葉 | 定性的(数字じゃなくてOK) |
| KR:Key Results(主要な成果) | 目標に近づけたかを測る指標。1つのOに3つ前後 | 定量的(必ず数字で測る) |
具体例で見るとつかめます。
OKRの例(あるカフェチェーン)
O(目標):「地域でいちばん愛されるカフェになる」
KR1:リピート率を40%→60%に上げる
KR2:Googleの口コミ評価を平均4.5以上にする
KR3:月間来店者数を1万人にする
目標はワクワクする言葉、成果は全部数字。これがOKRの基本形です。
KPIとの違い
ここが一番知りたいところ。両方「数字で測る」ので混同されますが、目的が違います。
管理のものさし
- 目標達成までの進み具合を「監視」する
- 100%達成が前提
- 日々の業務がうまく回っているかを見る
挑戦のエンジン
- 高い目標へ全員を「引っぱる」
- 60〜70%達成で成功とみなす
- 会社の方向性と個人の仕事をつなぐ
決定的に違うのが「達成率の考え方」。KPIは100%達成して当たり前ですが、挑戦的に立てたOKRは60〜70%で成功とされます。
ただし、OKRにも2種類あります。Googleなどでは、わざと届かない高さに置く**挑戦型(ムーンショット)**と、**必ずやり切ると約束する型(ルーフショット/コミット型)**を分けて使います。60〜70%で良しとするのは挑戦型のほう。約束する型は、KPIと同じく100%達成をめざします。
なぜか。OKRはわざと「今のままでは届かない高い目標(ストレッチゴール)」を立てるから。100%簡単に届く目標は、低すぎる=挑戦していない、と考えるわけです。
項目ごとに並べると、性格の違いがはっきりします。
| 比べる点 | KPI | OKR |
|---|---|---|
| 何のための道具か | 業務が計画どおり回っているかの監視 | 高い目標へ全員を前進させる |
| 達成の基準 | **100%**が前提。未達は問題として扱う | 挑戦型は**60〜70%**で成功(100%連発は目標が低いサイン)。約束する型は100%をめざす |
| 目標の高さ | 達成できる範囲で設定する | あえて届かない高さに置く(ストレッチ) |
| 見直しの周期 | 月次・四半期。年間で固定することも多い | 四半期ごとに立て直すのが基本 |
| 公開範囲 | 部署内・管理職まで、ということが多い | 全社に公開するのが原則 |
| 数の目安 | 部署ごとに数個〜十数個 | 1階層あたり O は1〜3個、KR は各3個前後 |
| 人事評価との関係 | 評価に使われることが多い | 直結させないのが鉄則 |
| 向いている場面 | 定常業務の品質・効率を保つ | 事業の方向を変える・伸ばす |
「どちらが優れているか」ではなく、役割が違うというのが実態です。多くの会社は両方を併用しています。
KGI・KPI・OKR、3つの関係を1枚で
似た略語が並ぶので、ここで整理しておきます。
KGIとKPIは「何を測るか」の話、OKRは「目標をどう立てて共有するか」の話。並列に比べるものではなく、レイヤーが違うと考えると混乱しません
KGI・KPI・OKRの位置関係
だから「OKRのKRにKPIを置く」という使い方が成立します。O は言葉で方向を示し、その達成度を測る KR に、すでに追っている KPI を持ってくる。別物を2つ管理するのではなく、入れ子にするのが現実的なやり方です。
同じ会社で両方を使う例
抽象的だと分かりにくいので、ひとつの会社の例で並べます。
問い合わせ一次返信 24時間以内
下がったら異常
KR1:法人契約 20→50社
KR2:導入後30日の利用率 70%
KPIは守りの指標で、悪化したら手を打つもの。OKRは攻めの目標で、達成できなくても学びが残ればよいもの。両方あって初めて、守りながら攻められる状態になります
KPIとOKRは併用できる。守りと攻めで役割が分かれる
「OKRを入れるからKPIをやめる」という導入をすると、日常の異常に気づけなくなります。ここは実際によくある失敗です。
ムーンショットとルーフショット
OKRでよく出る2つの言葉。
- ムーンショット:月を目指すような、達成できるか分からないほど高い目標。60%でも大成功
- ルーフショット:屋根に届く程度の、頑張れば届く現実的な目標。手堅く積み上げたいとき
「月を狙え。たとえ外しても、星のどこかには届く」という発想。低い目標を確実にこなすより、高い目標に挑んで7割届くほうが、結果的に遠くまで行ける、という考え方です。
OKRの立て方(4ステップ)
- 会社全体のOKRを決める(一番上の方向性)
- それに沿って各チームのOKRを決める(会社のKRがチームのOになる)
- 個人のOKRに落とす(チームを支える自分の役割)
- 週1で進捗確認、四半期ごとに振り返り
ポイントは「縦につながっていること」。社長の目標 → 部署の目標 → 自分の目標が一本の線でつながるので、「自分の仕事が会社のどこに効いているか」が見えるようになります。
OKRを人事評価と直結させない
これが導入の最大の落とし穴。OKRの達成率を給料やボーナスに直結させると、みんな「確実に達成できる低い目標」しか立てなくなり、挑戦するというOKR本来の意味が死にます。シンプリでは「OKRは挑戦のための地図、評価は別のものさしで」と整理しています。
週1の「チェックイン」が実務の中心
OKRは立てて終わりではありません。運用の8割は週1回のミーティングにあります。
- 各KRの数字を更新する。今どこまで来たかを、感覚ではなく数字で置く
- 自信度を0〜10で申告する。「このKR、期末に届く自信は何点?」を毎週聞く。点数が下がった週に手を打つのが肝
- 今週やることを1〜3個決める。KRを動かす行動だけに絞る
- 詰まっている点を出す。他部署の協力が要るならその場で頼む
このうち2番目の自信度が、KPI管理には無い発想です。数字はまだ動いていなくても、「届く気がしなくなった」という感覚は先に落ちます。遅行指標である数字より早く危険を察知するための仕組みです。
四半期という長さの意味
OKRは3か月区切りが基本です。1年だと途中で状況が変わって形骸化し、1か月だと挑戦的な目標を立てる余地がない。「本気で走れば何かが変わり、外しても致命傷にならない」長さとして3か月が選ばれています。
よくある失敗パターン
導入した会社が転ぶ場所は、だいたい決まっています。
| 失敗 | 何が起きるか | 対処 |
|---|---|---|
| 評価と直結させる | 全員が達成できる低い目標を出す。挑戦が消える | 評価は別のものさしで。OKRは地図として使う |
| KRが行動になっている | 「週1で会議をする」など、やれば達成できる項目が並ぶ | KRは結果の数字。行動はタスクとして別に置く |
| 数が多すぎる | Oが10個並び、どれも中途半端に終わる | Oは1〜3個まで。捨てる判断がOKRの本体 |
| 非公開にする | 他部署が何をしているか分からず、連携が生まれない | 全社公開が原則。見えないOKRは効果が半減する |
| 立てっぱなし | 期末に見返して「そういえばこんなの立てたね」で終わる | 週1のチェックインを必ず回す |
いちばん多いのは2番目です。「新機能を3つリリースする」はKRのように見えますが、リリースしたかどうかは自分たちの都合で決まるので、成果ではなく行動です。「新機能によって継続率が5ポイント上がる」まで書いて初めてKRになります。
OKRが向いている会社・向かない会社
正直に書きます。万能ではありません。
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 成長中で方向性を合わせたい | ルーティン業務が中心 |
| 挑戦的な目標で伸ばしたい | 短期の数字管理だけしたい |
| 部署間の連携を強めたい | トップダウンで細かく管理したい |
ルーティンの精度を上げたいだけなら、KPI管理やPDCAで十分なことも多い。「流行っているから」で入れると形だけになります。
よくある誤解
- 「OKRはKPIの新しい呼び方」→ ✕。KPIは測る指標、OKRは目標の立て方。レイヤーが違うので、置き換えではなく併用します
- 「OKRは達成しないといけない」→ △。挑戦型なら、100%が続くのは目標が低いサイン。60〜70%が設計どおりです。ただし「必ずやり切る」と約束する型のOKRは100%をめざします。どちらの型として立てたのかを最初に決めておくのが大事
- 「Objectiveにも数字を入れるべき」→ ✕。数字はKRの担当。Oは覚えられて口に出せる言葉であることのほうが大事
- 「小さい会社には向かない」→ △。人数が少ないほど全員が同じOを見ている状態を作りやすいので、むしろ相性はいい。合わないのは規模ではなくルーティン中心の業務のほう
- 「導入したら成果が上がる」→ ✕。OKRは目標を見える化する枠でしかありません。中身を決めるのは人で、枠だけ入れても何も変わりません
まとめ
- OKR = 目標(Objective)と成果指標(Key Results)をセットで決める目標管理の手法
- 1つのワクワクする目標に、数字で測れる成果指標を3つ前後ぶら下げる
- KPIが「管理のものさし」なら、OKRは「挑戦のエンジン」
- 挑戦型(ムーンショット)なら達成率 60〜70%で成功。約束する型(ルーフショット)は100%をめざす
- 会社→チーム→個人で縦につなげ、全員が同じ方向を向くのが狙い
- 人事評価と直結させると挑戦しなくなるので注意
KPI・PDCA・マーケティングとあわせて押さえると、目標管理まわりの会議でつまずかなくなります。
目標設計の全体像は、最終ゴールを示すKGIとあわせて読むと整理できます(KGI=到達点、KPI=途中の計測指標、OKR=挑戦的な目標設定の型)。