「日本は累進課税だから、稼ぐほど取られる」。なんとなく知っているけど、「年収が上がったら税率が上がって、かえって手取りが減るのでは?」という不安を持つ人は多い。
実はそれは誤解です。仕組みを正しく整理します。
累進課税とは、所得が多い人ほど高い税率をかける課税の仕組みのこと。
日本の所得税は 5%〜45%の7段階で、稼ぎが増えるほど段階的に税率が上がる。
ポイントは 「上がった税率は、増えた分だけにかかる」こと。だから所得税だけで見れば「年収が増えた瞬間に手取りが逆に減る」ことは起きません。ここが一番の誤解ポイントです。
なぜ累進課税があるのか
理由は「所得の再分配」と「負担能力に応じた公平」です。
- たくさん稼ぐ人ほど、生活に余裕があるぶん多く負担できる
- 集めた税金を、社会保障などで広く配り直す
- 「全員一律10%」より、格差をやわらげる効果がある
「お金持ちから多めに取って、社会全体で支え合う」という考え方が根っこにあります。
一番の誤解:「税率が上がると手取りが減る」
ここが本当に大事なところ。増えた所得の"全部"に高い税率がかかるわけではありません。
税率は「超えた分だけ」に適用される
たとえば「課税所得が195万円を超えると税率10%」でも、課税所得が196万円になった人の所得全部に10%がかかるのではありません(課税所得=年収から給与所得控除や基礎控除などを引いた残り。年収そのものではありません)。195万円までは5%、超えた1万円分だけに10%がかかる。これを「超過累進課税」といいます。だから「年収が上がった途端に手取りが減る」ことは起きない。増えた分の一部が多めに取られるだけで、所得税だけで見れば手取りは必ず増えます(社会保険の扶養から外れるときは別。後述の「年収の壁」を参照)。
「昇給したら税率の段が上がって損する」というのは、この仕組みを知らないことから来る代表的な勘違いです。
税率は所得全体にかかるのではなく、その段に乗った分だけにかかります。だから所得税の税率のせいで「昇給したら手取りが減る」ことは起きません。増えた分の一部が多めに引かれるだけです
超過累進課税は積み木。下の段の税率は上がらない
所得税の税率(7段階)
日本の所得税の速算は、ざっくりこうなっています。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超〜330万円 | 10% |
| 330万円超〜695万円 | 20% |
| 695万円超〜900万円 | 23% |
| 900万円超〜1,800万円 | 33% |
| 1,800万円超〜4,000万円 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
ここでの「所得金額」は、年収そのものではなく、年収から控除を引いた後の金額です。各段階の税率は「その段階に入った金額分」だけにかかります。
「累進」じゃない税金もある
すべての税金が累進ではありません。対になる考え方が「比例課税」です。
稼ぐほど高率
- 所得税・相続税・贈与税
- 所得が多いほど税率アップ
- 格差をやわらげる狙い
消費税は誰が買っても同じ税率なので、低所得の人ほど収入に占める負担が重くなる(逆進性)と言われます。累進課税と比例課税を組み合わせて、全体のバランスを取っているわけです。
会社員はどう納めている?
累進課税の所得税は、会社員の場合、毎月の給料から源泉徴収で天引きされ、年末に年末調整で精算されます。だから多くの人は「自分で税率を計算して納める」感覚がないまま、累進課税を払っています。
「年収の壁」とは別の話
パートでよく聞く「年収の壁」は、累進課税の段階とは別物。2026年分なら、年収136万円を超えると親や配偶者の扶養控除・配偶者控除の対象から外れ、178万円を超えると本人に所得税がかかり始めます(以前はどちらも「103万円の壁」と呼ばれていた)。さらに年収130万円前後では社会保険の扶養から外れて保険料がかかり、ここでは手取りが減ることがあります。これらは控除や保険のラインの話です。累進課税(税率の段階)と、扶養の壁(控除の境目)は混同されがちなので、分けて理解するのがコツです。
よくある誤解
- 「年収が上がると税率が上がって手取りが減る」→ ✕。上がった税率は超えた分だけ。所得税の税率のせいで手取りが減ることはない
- 「税率は年収全体にかかる」→ ✕。各段階の金額にそれぞれの税率がかかる(超過累進)
- 「全部の税金が累進」→ ✕。消費税など一律(比例)の税金もある
まとめ
- 累進課税 = 所得が多い人ほど高い税率をかける仕組み(日本の所得税は5〜45%の7段階)
- 目的は所得の再分配と、負担能力に応じた公平
- 上がった税率は「超えた分」だけにかかる(超過累進)。所得税の税率のせいで手取りが減ることはない
- 税率は年収ではなく控除を引いた後の所得にかかる
- 消費税のような一律(比例)課税とは対の考え方
- 会社員は源泉徴収+年末調整で自動的に納めている
源泉徴収・控除・確定申告とあわせて読むと、所得税の全体像がつかめます。
税率の詳細は 国税庁 所得税の税率 が一次情報です。2026年分の基礎控除・扶養の所得要件は 国税庁 令和8年分の基礎控除の見直し等 で確かめられます(2026年10月14日確認)。