生命保険とは?必要性と選び方

「みんな入ってるから」で入ると損する生命保険。種類・必要性・選び方・本当に必要な人をフラットに整理します。

生命保険とは?必要性と選び方のイメージ画像
Photo by Monstera Production on Pexels
この記事の目次 16
  1. 生命保険の正体
  2. 主な保険の種類
  3. 定期保険 vs 終身保険
  4. 本当に必要な人・不要な人
  5. いくらの保険に入るか(必要保障額)
  6. 必要保障額を、実際に計算してみる
  7. 保険料はどう決まっているのか
  8. 公的保障の存在を忘れずに
  9. 保険選びの実用ステップ
  10. 見直すべきタイミングは決まっている
  11. 加入するときに聞かれること・答え方
  12. よくある誤解
  13. 解約・減額を考えるときの判断軸
  14. 生命保険料控除(節税)
  15. 保険金を受け取るときに知っておくこと
  16. まとめ

「社会人になったから生命保険入った?」「家族ができたら入るべき」と勧められる生命保険。

でも、

「本当に必要?」「いくらの保険に入る?」「健康保険で足りないの?」

を、保険販売員のセールストークではなく、フラットな視点で整理します。

生命保険とは、「自分が死亡 or 重い病気になった時、残された家族の生活を経済的に守るための保険」です。
主な種類は 定期保険・終身保険・収入保障保険・医療保険・がん保険の5つ。
本当に必要なのは 子育て中の家計を支える人。独身や子育て終了世代には不要 or 最小限で十分です。

生命保険の正体

生命保険は、「自分の死亡・重病で経済的に困る人を守るための仕組み」 です。

これから必要なお金生活費・教育費
−
すでに用意されているもの遺族年金・貯蓄・収入
=
保険で埋める額必要保障額

保険は足りない差額を埋めるものであって、全額を用意するものではありません。遺族年金を引き忘れて入りすぎている人がとても多いのがこの計算のポイントです

いくらの保険に入るべきかは、引き算で決まる

カバーするリスク:

  1. 世帯主の死亡:残された家族の生活費・教育費
  2. 長期入院:健康保険・高額療養費制度でカバーしきれない部分
  3. がん・三大疾病:先進医療・長期治療の費用
  4. 介護状態:介護保険でカバーしきれない部分
  5. 就労不能:働けなくなった時の収入補填

「もしも」が起きた時の経済的ダメージを軽くするのが目的です。

主な保険の種類

代表的な5タイプ:

種類 内容 期間
定期保険 死亡時のみ給付、掛け捨て、安い 10年・20年など定期
終身保険 死亡時に必ず給付、貯蓄性あり、高い 一生涯
収入保障保険 死亡後、毎月給与のように受け取り 定期
医療保険 入院・手術時に給付 定期 or 終身
がん保険 がん診断時に給付 定期 or 終身

保険料の安さ:定期保険 < 収入保障 < 医療 < 終身保険 の順。

定期保険 vs 終身保険

迷う人が多い2つを比較:

定期保険

掛け捨て・安い

  • 30歳男性で月数百〜数千円
  • 満期で保障終了(貯蓄性なし)
  • 家族のいる現役世代向け
  • 更新で保険料アップ
終身保険

貯蓄性あり・高い

  • 30歳男性で月1〜3万円
  • 解約返戻金あり(貯蓄性)
  • 葬儀費用カバー目的
  • 保険料は一生変わらない

「貯蓄もできる」と勧められる終身保険ですが、運用利率はNISAやiDeCoに比べて圧倒的に低い。貯蓄目的なら別手段が合理的です。

本当に必要な人・不要な人

正直に書きます:

必要な人

家計を支える人

  • 子育て中の世帯主
  • 専業主婦と子どもがいる夫
  • 住宅ローン残債が大きい人
  • 自営業(厚生年金の遺族年金が薄い)
不要な人

家計依存者がいない

  • 独身(葬儀費用程度の貯金があれば不要)
  • 子育てが終わった共働き世帯
  • 定年退職後で十分な資産がある人
  • 専業主婦の死亡保険(収入なら不要)

「みんな入ってるから」「セールス担当がいいって言うから」では入らないのが鉄則です。

いくらの保険に入るか(必要保障額)

子育て世帯の目安:

必要保障額 = 残された家族の支出 − 残された家族の収入

具体的な計算(夫死亡時、妻と子1人):

項目 金額
妻の生活費(30年) 約5,400万円
子の教育費 約1,500万円
葬儀費用 約200万円
支出合計 約7,100万円
遺族年金(30年) 約2,500万円
妻のパート収入(20年) 約2,400万円
死亡退職金・貯蓄 約1,000万円
収入合計 約5,900万円
必要保障額(不足分) 約1,200万円

「3,000万円・5,000万円の保険」は 過剰なケースが多いです。

必要保障額を、実際に計算してみる

「いくら入ればいいか」は、感覚ではなく引き算で出せます。よくあるモデルで実際に計算します。

i

前提:35歳・会社員・配偶者と子1人(5歳)

賃貸住まい、貯蓄300万円、配偶者はパート勤務。この人が亡くなった場合を考えます。

① これから必要になるお金

項目 金額の目安
遺族の生活費(月20万円 × 22年) 約5,280万円
子の教育費(高校まで公立・大学私立文系) 約1,000万円
葬儀費用・予備費 約300万円
合計 約6,580万円

② すでに用意されているお金

項目 金額の目安
遺族年金(遺族基礎+遺族厚生) 約3,500万円(子が18歳になるまで+その後の分)
配偶者の収入(月10万円 × 20年) 約2,400万円
貯蓄 300万円
合計 約6,200万円

③ 差額が、保険で埋めるべき額

必要なお金6,580万円
−
すでにあるもの6,200万円
=
保険で備える額約380万円

数字は前提しだいで大きく動きますが、「6,000万円必要だから6,000万円の保険」ではないことは、この形にすると一目で分かります

必要保障額は引き算で決まる。公的保障を引き忘れない

この計算をせずに勧められるまま入ると、たいてい過剰になります。逆に、自営業で遺族厚生年金がない人や、配偶者が働いていない家庭では、必要額が跳ね上がります。同じ年齢でも、家庭の条件で答えがまったく違うのが生命保険です。

保険料はどう決まっているのか

「なぜ自分の保険料はこの金額なのか」が分かると、比較の目が変わります。保険料は大きく2つの部分でできています。

部分 中身
純保険料 保険金を支払うための原資。年齢・性別ごとの死亡率をもとに計算される
付加保険料 保険会社の運営費・人件費・広告費・代理店手数料など

同じ保障内容でも会社によって保険料が違うのは、主に後者の差です。だからネット専業の保険会社は安くなりやすい。対面で相談に乗ってもらう分の費用が、保険料に含まれていないからです。

!

「保険料が上がる」のは更新のとき

定期保険には更新型のものがあり、10年ごとなどに自動更新されます。このときその時点の年齢で保険料が計算し直されるため、30代では安くても、50代・60代で一気に上がります。「若いうちは安いですよ」と勧められた保険が、後で家計を圧迫するのはこのパターン。いつまで、いくらで払い続けるのかを契約時に確認してください。

公的保障の存在を忘れずに

健康保険・厚生年金には強力な保障があります:

保障 内容
高額療養費制度 医療費の自己負担に月額上限
傷病手当金 病気で休んだ時、給与の2/3を最長1年6ヶ月
遺族基礎年金 子のある配偶者に年約85万円+子の加算(2026年度。子1人なら約109万円)
遺族厚生年金 亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の約3/4
障害年金 障害等級に該当するあいだ支給(定期的に更新の審査あり)

「保険のセールスは公的保障を計算に入れない」 ことが多く、過剰な保険を勧められます。

保険選びの実用ステップ

正解パターン:

  1. 公的保障を計算(遺族年金、傷病手当金)
  2. 残りの不足額を算出(必要保障額)
  3. 定期保険 or 収入保障保険で安く備える
  4. 医療は高額療養費制度+預貯金で対応(不安なら最低限の医療保険)
  5. 子育て終了で順次解約

「掛け捨て=損」というセールストークは無視 していいです。

見直すべきタイミングは決まっている

生命保険は「入って終わり」にしがちですが、必要な保障額は人生の段階で大きく上下します。見直す価値があるのは、次のタイミングです。

タイミング 起きる変化
結婚した 守る相手ができる。保障が必要になる入口
子どもが生まれた 必要保障額が最大になる。教育費と生活費の両方を見込む
住宅を買った 団体信用生命保険に入るため、住居費ぶんの保障は不要になる
子どもが独立した 必要保障額が一気に下がる。減額・解約を検討する時期
転職・独立した 会社の保障がなくなる。公的保障も国民健康保険・国民年金に変わる
✓

住宅ローンを組んだら、必ず保障を引き直す

住宅ローンには通常団体信用生命保険(団信)が付いていて、契約者が亡くなるとローンの残債がゼロになります。つまりその時点で「住む場所の費用」は保障済み。ここを引かずに生命保険を掛け続けていると、二重に備えていることになります。家を買ったら保険を見直すのは、ここが理由です。

加入するときに聞かれること・答え方

申し込みでつまずくのが 告知 です。ここでの対応を間違えると、いざというとき保険金が出ません。

告知で聞かれるのは、おおむねこの範囲です。

  • 直近3か月以内の医師の診察・検査・投薬
  • 過去5年以内の入院・手術・7日以上の治療
  • 過去2年以内の健康診断で再検査・要精密検査を指摘されたか
  • 現在の身長・体重、喫煙の有無
!

「言わなければバレない」は成立しない

保険金を請求すると、保険会社は医療機関に照会をかけます。そこで告知していなかった通院歴が出れば告知義務違反となり、契約が解除されて保険金は支払われません。しかもそれまでに払った保険料は基本的に戻りません。持病があっても入れる商品はあるので、正直に申告したうえで選ぶのが唯一の正解です。

持病や既往症がある場合の選択肢も知っておくと、あきらめずに済みます。

種類 特徴
引受基準緩和型 告知項目が3〜5個程度に絞られる。保険料は割高
無選択型 告知なしで入れる。保険料はさらに高く、加入後しばらく保障が制限される
部位不担保 「この病気に関する分だけ対象外」として、通常の保険に入る条件付き加入

順番としては、まず通常の保険で申し込んでみるのが基本です。断られてから緩和型を検討する。最初から高い商品を選ぶ必要はありません。

よくある誤解

誤解 実際
「貯蓄もできる終身保険がお得」 運用利回りはNISA・iDeCoより低い
「医療保険は必須」 高額療養費制度+預貯金100万円で大半カバー可能
「掛け捨ては損」 必要な期間だけ買う合理的な選択
「保険で資産形成」 保険は保障、投資は投資で分けるのが鉄則
「特約はあって損なし」 不要な特約は保険料を上げるだけ

解約・減額を考えるときの判断軸

保険は「入る」判断より「やめる・減らす」判断のほうが難しく、そのまま放置されがちです。判断材料を整理します。

  1. まず減額を検討する。全部やめるのではなく保障額を下げると、保険料だけ軽くできます。解約とは扱いが違い、契約は残ります
  2. 払済保険にするという手もある。以後の保険料を払わずに、保障額を下げて契約を続ける方法。貯蓄性のある保険で使えます
  3. 解約返戻金を確認する。特に貯蓄型は、早期に解約すると払った額を大きく下回ります。証券か保険会社の窓口で必ず確認を
  4. 次を決めてから解約する。解約してから新しい保険に入ろうとして、健康状態を理由に加入できないケースがあります。空白期間を作らない
!

乗り換えを強く勧められたら、いったん止まる

「新しい商品のほうが有利です」という提案が、必ずしも本人にとって有利とは限りません。今の契約を解約すると、当時の年齢・健康状態で得ていた条件は戻ってきません。判断に迷ったら、その場で決めず、証券を持ち帰って他社と比べる。急かされる提案ほど、いったん距離を取るのが安全です。

生命保険料控除(節税)

支払った保険料は所得税・住民税の控除対象:

控除種類 所得税最大控除額 住民税最大控除額
一般生命保険料控除 40,000円 28,000円
介護医療保険料控除 40,000円 28,000円
個人年金保険料控除 40,000円 28,000円
合計 120,000円 70,000円

※2026年分からは、23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除(所得税)の上限が6万円に上がりました(3つの合計上限12万円は同じ)。

年末調整 or 確定申告で適用します。

保険金を受け取るときに知っておくこと

いざというとき、遺族が困らないための実務も書いておきます。

  1. 請求しないと出ません。保険会社が亡くなったことを自動で知る仕組みはありません。遺族が請求して初めて支払われます
  2. 請求期限は原則3年。過ぎると請求権が時効にかかります
  3. 受取人の口座に直接入ります。生命保険金は遺産分割の対象外(受取人固有の財産)なので、口座凍結の影響を受けずに受け取れます
  4. 税金の扱いは契約の形で変わります。誰が払い、誰が受け取るかで、相続税・所得税・贈与税のどれになるかが決まります
保険料を払う人 亡くなる人 受け取る人 かかる税
夫 夫 妻 相続税(500万円×法定相続人の非課税枠あり)
妻 夫 妻 所得税(一時所得)
妻 夫 子 贈与税(いちばん重くなりやすい)
!

契約者・被保険者・受取人の組み合わせで、手取りが変わる

同じ保険金額でも、3番目のパターンは税負担が大きく重くなります。加入時にはあまり意識されませんが、後から気づいても変更が難しいことがあります。契約時に「誰が払って、誰が受け取るか」を確認するだけで防げる損です。詳しくは相続税の記事も参考にしてください。

まとめ

  • 生命保険 = 自分が死亡・重病になった時に家族を経済的に守る仕組み
  • 種類は 定期・終身・収入保障・医療・がん の5タイプ
  • 本当に必要なのは 子育て中の家計を支える人、独身や子育て終了世代には不要
  • 必要保障額は「家計支出 − 公的保障・貯蓄」で算出
  • 高額療養費制度・遺族年金など 公的保障の存在を計算に入れる
  • 「貯蓄性」を売りにする終身保険より、NISA・iDeCoで運用するのが合理的

健康保険・介護保険・雇用保険など公的保険を理解した上で「不足する部分だけ」を民間保険で補う、が基本姿勢です。

死亡に備えるのが生命保険、入院や手術に備えるのが医療保険で、必要かどうかの判断軸がそもそも違います。

詳しくは 生命保険文化センター や 金融庁 保険会社一覧 が中立的な情報源です。公的年金の額は 日本年金機構「遺族基礎年金」、控除は 国税庁 No.1140 生命保険料控除 で確かめられます(2026年10月14日確認)。

この記事をシェア