親が認知症になって預金が引き出せなくなった、不動産売却の契約ができなくなった。
この時に出てくるのが「成年後見人」という制度。
ただ、便利そうで実はけっこう問題も多い。良し悪し含めて整理します。
成年後見人は、「判断力が落ちた人の代わりに、お金や契約を管理する人」のこと。
家庭裁判所が選任する公的な制度。
便利な反面、家族が後見人になれないことが多い、月数万円の費用が発生するなどデメリットも大きい。
なぜ成年後見人が必要になる?
認知症などで判断力が落ちると、本人は法律的に「契約できない人」とみなされます。
すると、
- 銀行の預金が引き出せない(本人の意思確認が取れないので凍結)
- 介護施設への入居契約ができない
- 不動産の売却ができない
- 相続の手続きが進まない
実際に親が認知症になって初めて、「うちの親、預金引き出せない…」と気づくケースが続出しています。
成年後見制度の2種類
成年後見制度には大きく2タイプあります。
判断力が落ちた後で申し立てる
- 家庭裁判所が後見人を選ぶ
- 本人の判断力に応じて3段階
- 申立費用:1万円程度〜
- 多くの場合、ここを使う
元気なうちに自分で決めておく
- 判断力があるうちに契約しておく
- 後見人を自分で選べる
- 公正証書で作成
- 使う人はまだ少ない
ほとんどの人は「親が認知症になってから」気づくので、法定後見 を使うことになります。
後見人は家庭裁判所が選ぶ
ここが重要ポイント。
「家族(妻、子ども)を後見人にしたい」と希望しても、家庭裁判所が判断します。
近年は家族不和の防止や財産の使い込み防止のため、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士)が選ばれることが多い。
実は 約8割が専門職 に選任されている、というのが現在の実情です。
家族なのに見ず知らずの人に管理される
「親のお金なのに、なんで他人の弁護士に管理されないといけないの?」と感じる家族は多い。これが 制度の最大の不評ポイントです。
費用がずっとかかる
専門職後見人が選ばれると、月2〜6万円の報酬が発生し続けます。
- 預金1,000万円程度の人 → 月2〜3万円
- 預金が多い人 → 月5〜6万円
これは 本人が亡くなるまで ずっと払い続ける必要があります。10年生きれば、200〜600万円が後見人報酬で消える計算。
一度始めたらやめられない
後見人制度の 大きな落とし穴がここ。
一度後見人が付くと、本人が亡くなるまで原則やめられません。
「思ったより使い勝手悪いから、やっぱ家族でやろう」が効かない。手続きを進める前に 慎重に検討する必要があります。
後見人がやってくれること・やってくれないこと
財産管理・法律行為
- 預金の引き出し・支払い
- 不動産売却契約
- 介護施設の入居契約
- 遺産分割協議への参加
身の回りの世話
- 食事の介助
- 身の回りの介護
- 掃除・買い物の代行
- 本人の医療の同意
つまり後見人は「お金と契約のことだけ」やる人。介護そのものはやってくれない。介護は別途、家族や介護施設・介護保険に頼ることになります。
「家族信託」という代替手段
最近、成年後見の代替として人気が出てるのが 家族信託。
家族信託は、元気なうちに信頼できる家族に財産管理を任せる契約 を結んでおく仕組み。
| 項目 | 成年後見 | 家族信託 |
|---|---|---|
| 開始タイミング | 判断力低下後 | 元気なうち |
| 管理する人 | 専門職になることが多い | 家族 |
| 費用 | 月2〜6万円継続 | 初期費用のみ |
| 柔軟性 | 低い(裁判所監督) | 高い |
| 死後の財産処分 | 不可(相続別途) | 信託で指定可能 |
ただし、家族信託は 元気なうちに準備が必要 なので、すでに認知症が進んでいると間に合わない。早めの検討が重要です。
まとめ
- 成年後見人 = 判断力が落ちた人の代わりに、お金や契約を管理する人
- 法定後見(後から)と任意後見(事前)の2タイプ
- 約8割が弁護士・司法書士などの専門職に選任される
- 月2〜6万円の報酬が亡くなるまで継続
- 一度始めたらやめられない
- 介護そのものはやってくれない(あくまで法律行為のみ)
- 元気なうちなら「家族信託」という選択肢もある
介護保険や相続税とセットで、高齢化社会の必須知識になりつつあります。
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