「◯◯容疑者を逮捕」「勾留が決定しました」。ニュースで並んで出てくるので、同じ意味だと思っている人が多い言葉です。
でも 逮捕と勾留は別の手続き。決める人も、拘束される期間も違います。事件の流れに沿って見ると、一気に分かりやすくなります。
逮捕=身柄を捕まえる初動の短期拘束。ここから 最大72時間。
勾留=逮捕のあと、捜査を続けるための長期拘束。原則10日+延長で最大20日。
決めるのは、逮捕が警察・検察、勾留は裁判官。ここが大きな違いです。
事件の流れで見ると分かりやすい
逮捕と勾留は別々の手続き。逮捕は最長72時間の入口、勾留はそのあとに続く最長20日で、判断するのも警察・検察・裁判官とそれぞれ違います
通常の1つの事件について、逮捕から起訴までの流れ。最長23日というのはこの合計(内乱罪など一部の罪では、さらに延長できる規定がある)
逮捕から起訴までは、時間制限がかなり細かく決まっています。
- 逮捕:警察が身柄を拘束。ここから48時間以内に検察官へ送る(送検)
- 送検:検察官は24時間以内に、勾留を請求するか判断(逮捕から通算72時間以内)
- 勾留請求 → 裁判官が判断:認められると原則10日間の勾留
- 延長:必要ならさらに最大10日(合計最大20日)
- 起訴 / 不起訴:検察官が裁判にかけるか決める
「72時間」と「20日」がキーワード
逮捕だけで拘束できるのは最大72時間。それ以上続けたいなら、検察官が裁判官に勾留を請求し、認めてもらう必要があります。通常の事件なら、逮捕から起訴までの身柄拘束は 72時間+20日=およそ23日が上限です(内乱罪など一部の罪にはさらに5日延長できる規定があります。また、別の事件で逮捕し直されると、その事件で改めて期間が数えられます)。
逮捕と勾留のちがい(対比)
捕まえる(初動)
- 期間:最大72時間
- 判断:警察・検察(逮捕状は裁判官が発付)
- 目的:逃亡・証拠隠滅をすぐ防ぐ
- この段階では起訴されていない
留め置く(捜査のため)
- 期間:原則10日+延長10日=最大20日
- 判断:裁判官が決定
- 目的:取り調べ・証拠収集を続ける
- 不服なら「準抗告」で争える
身柄拘束の期間 早見表
数字が多くて混乱しやすいので、時間の流れで並べます。
| 段階 | 上限 | 誰が判断する | この間にできること |
|---|---|---|---|
| 逮捕(警察) | 48時間以内に検察へ送る | 警察 | 弁護士を呼べる |
| 検察の持ち時間 | 送致から24時間 | 検察官 | 同上(逮捕から通算72時間) |
| 勾留 | 10日間 | 裁判官(勾留質問を経て決定) | 家族との面会が可能になる場合がある |
| 勾留の延長 | さらに最大10日間 | 裁判官 | やむを得ない事由がある場合のみ |
| 合計(通常の1事件・起訴前) | 最長23日間 | — | この間に起訴・不起訴が決まる |
逮捕からの72時間は、原則として家族も面会できません。この時間帯に会えるのは弁護士だけ、という点が実務上いちばん大きな違いです。
全員が逮捕・勾留されるわけではない
ここも誤解が多いところ。事件を起こしたら必ず身柄を取られる、というものではありません。
- 在宅捜査:逃亡や証拠隠滅のおそれが低ければ、身柄を拘束せず、呼び出しベースで捜査が進むこともあります
- 釈放:勾留が認められなかったり、途中で必要がなくなれば釈放されます
- 不起訴:勾留されても、検察官が起訴しない判断をすれば裁判にはなりません
逮捕=有罪ではない
逮捕はあくまで捜査のための手続きで、有罪が決まったという意味ではありません。日本国憲法・刑事訴訟法のもとでは、有罪が確定するまでは無罪として扱われる(推定無罪)のが原則です。報道で名前が出ると有罪のように見えてしまいますが、法的にはまったく別の話です。
起訴されたあとはどうなる?
起訴されると、被疑者は「被告人」と呼び方が変わり、裁判が始まります。
- 起訴後も身柄が続く場合は「起訴後勾留」(被告人の勾留)になります。期間は2か月で、必要があれば1か月ごとに更新されます。この段階からは保釈を請求できるようになります(起訴前は保釈できません)
- 重大事件では裁判員制度の対象になり、一般市民が裁判に加わります
- 有罪でも、事情によっては刑の執行を猶予する執行猶予がつくことがあります
よくある誤解
- 「逮捕されたら有罪」→ ✕。推定無罪が原則。起訴すらされないこともある
- 「勾留と拘留は同じ」→ ✕。「拘留」は1日以上30日未満の刑罰の一種。身柄を確保するための「勾留」(起訴前・起訴後の両方がある)とは別物(読みは同じ「こうりゅう」)
- 「逮捕されたらずっと出られない」→ ✕。通常の事件なら起訴前は最長でも約23日。釈放・不起訴もある
- 「勾留は警察が決める」→ ✕。請求は検察官、決めるのは裁判官
逮捕されたら、まず何ができるのか
本人にも家族にも、認められている権利があります。知らないと使えないので書いておきます。
- 黙秘権。答えたくないことは答えなくてよい。黙ったことを不利な証拠にはできません
- 弁護人選任権。逮捕直後から弁護士を呼べます。お金がなくても当番弁護士を1回無料で呼べます
- 接見(面会)。弁護士とは立会人なしで会えます。家族の面会は、勾留後で、かつ接見禁止がついていない場合に限られます
- 署名を拒める。供述調書の内容が自分の話と違えば、署名・押印を拒否できます
いちばん多い失敗は、早く帰りたくて署名してしまうこと
供述調書はあとから裁判で使われる証拠です。「だいたい合っているし、認めれば早く帰れるだろう」と署名してしまうと、あとで「そんなことは言っていない」と争うのが難しくなります。納得できない部分があるなら署名しない——これは正当な権利です。
まとめ
- 逮捕 = 最大72時間の初動拘束。勾留 = 原則10日+延長10日の長期拘束
- 勾留を決めるのは 裁判官(警察でも検察でもない)
- 通常の事件なら、起訴までの身柄拘束は 最長およそ23日。起訴後の勾留は2か月ごとの更新で続くことがある
- 全員が拘束されるわけではなく、在宅捜査・釈放・不起訴もある
- 逮捕は有罪の意味ではない(推定無罪)
捜査する側の仕組みは警察官と刑事の違い、裁判に市民が関わる仕組みは裁判員制度、判決後の話は執行猶予へ。弁護士の頼み方は国選弁護人と私選弁護人の違い、起訴後に外へ出る仕組みは保釈とは、逮捕されずに事件が送られる場合は書類送検とは、記録がどう残るかは前科と前歴の違いで整理しています。実際に身近な人が逮捕された場合は、早い段階で弁護士(当番弁護士・法テラス)に相談してください。正確な手続きは裁判所の公式サイトが一次情報で、逮捕・勾留の期間は 刑事訴訟法(e-Gov法令検索) の203条〜208条で確かめられます(2026年10月14日確認)。