前科と前歴の違いとは?つくケースと消えるか

逮捕されたら前科?罰金なら前科じゃない?前科と前歴の違いを、どんなときにつくか、仕事や資格・海外旅行への影響、いつか消えるのかまで整理します。

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Photo by Joachim Schnürle on Pexels
この記事の目次 8
  1. 前科と前歴、何が違う?
  2. 「罰金なら前科じゃない」は間違い
  3. 生活への影響のちがい
  4. 履歴書に書く必要はある?
  5. 前科は消える?
  6. 前科はどこで分かる?
  7. よくある誤解
  8. まとめ

「逮捕されたら前科がつく」「罰金なら前科にならない」。どちらもよく聞きますが、どちらも間違いです。

前科と前歴は、似ているようで分かれ目がはっきりしています。ポイントは 「有罪が確定したかどうか」 の一点だけです。

前科=裁判で有罪が確定したこと。罰金でも、執行猶予つきでも前科です。
前歴=捜査の対象になったこと。逮捕された、書類送検された、不起訴になった、なども含みます。
どちらも法律で決まった言葉ではありませんが、有罪が確定したら前科、それより手前で終わったら前歴と覚えれば迷いません。

前科と前歴、何が違う?

前科

有罪が確定した

  • 拘禁刑の実刑
  • 執行猶予つきの判決
  • 罰金(略式命令も含む)
  • 科料・拘留
前歴

捜査の対象になった

  • 逮捕された(その後釈放)
  • 書類送検された
  • 不起訴になった(起訴猶予など)
  • 微罪処分で終わった

法務省の犯罪白書は、前科を 「有罪の確定裁判を受けたこと」 と定義しています。逆に言えば、どれだけ大きく報道されても、有罪が確定しなければ前科ではありません。

「罰金なら前科じゃない」は間違い

よくある勘違いがこれです。

罰金も、法律で決まった刑罰のひとつです(刑法9条)。だから罰金が確定すれば前科です。法廷を開かずに書類だけで罰金を決める「略式命令」も同じ。手続きは簡単でも、確定すれば普通の判決と同じ効力があります。

逮捕・書類送検
→
検察が判断
→
不起訴=前歴
逮捕・書類送検
→
起訴(略式も含む)
→
有罪が確定=前科

分かれ目は起訴されて有罪が確定したかどうか。逮捕されたかどうかは関係ありません。逮捕されずに罰金になれば前科、逮捕されても不起訴なら前歴です

前科になるか、前歴で終わるかの分かれ道

執行猶予つきの判決も、有罪判決なので前科です。刑務所に入らなかっただけで、無罪になったわけではありません(執行猶予とは)。

逮捕や書類送検のあとの流れは、逮捕と勾留の違いと書類送検とはで詳しく書いています。

生活への影響のちがい

影響 前科 前歴
資格・職業 刑の重さによって制限あり 原則として制限なし(一部例外あり)
選挙権 拘禁刑で服役中などは停止(執行猶予中は原則あり) 影響なし
パスポート 拘禁刑の執行が終わるまでは発給されないことがある 起訴されている間などは発給されないことがある
履歴書の賞罰欄 書く必要がある(裁判例) 書く義務はない(裁判例)
次に事件を起こしたとき 裁判で刑が重くなる方向に考慮される 処分を決めるときの参考にされうる

資格や職業への影響は、資格ごとに条件が違います。

  • 公務員:拘禁刑以上の刑を受けて、その執行が終わるまで(執行猶予ならその期間が終わるまで)はなれない。罰金の前科だけなら、公務員になれます
  • 弁護士:拘禁刑以上の刑を受けた人は、弁護士になる資格がない
  • 医師:罰金以上の刑を受けた人には、免許を与えないことがある(必ずではない)

前歴だけなら、原則として資格の制限はありません。ただし例外もあって、公務員は起訴された段階で休職させられることがあり、医師は「医事に関する犯罪や不正の行為」があれば、有罪判決がなくても免許を与えないことがあります。

履歴書に書く必要はある?

履歴書の「賞罰」欄について、仙台地裁の1985年の判決がよく引かれます。

  • 賞罰欄がある以上、前科は正確に書かなければいけない
  • 「罰」は確定した有罪判決のことなので、起訴猶予などの前歴まで書く義務はない
  • 刑が消滅した前科は、特別な事情がない限り、書かなくてもよい

最高裁の判例ではなく地裁の判断なので、どんな場合にも当てはまるわけではありません。ただ、考え方の目安としてよく使われています。

前科は消える?

ここがいちばん誤解の多いところです。答えは 「法的な効力は消えるが、事実そのものは消えない」。

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刑の消滅(刑法34条の2)

刑の執行が終わってから、罰金以上の刑を受けずに一定の期間がたつと、刑の言渡しは効力を失います。
・拘禁刑以上:10年
・罰金以下:5年
執行猶予の場合は、猶予期間を無事に終えた時点で効力を失います(刑法27条)。効力を失えば、資格の制限などもなくなります。

ただし、「刑を受けた」という事実まで消えるわけではありません。

  • 検察庁の前科の記録(犯歴)は、規程上、本人が亡くなるまで消されません
  • また事件を起こせば、裁判で消滅した前科も考慮されることがある(最高裁の判例)

つまり「社会生活の上での制限は外れるけれど、記録は残る」というのが正確なところです。

前科はどこで分かる?

前科の記録は2か所にあります。

  1. 検察庁:有罪が確定した記録(犯歴)を管理。照会できるのは刑事事件の捜査をする検察官などに限られる
  2. 本籍地の市区町村:罰金以上の刑が確定すると、検察庁から通知が来て「犯罪人名簿」に載る。選挙権があるかどうかを確かめるのが本来の目的

犯罪人名簿は、他人が見られるものではありません。市区町村が前科を安易に外部に伝えて違法とされた最高裁判例(1981年)もあります。また、交通違反の罰金は市区町村への通知の対象外です。

前科も前歴も、個人情報保護法では特に慎重に扱う 「要配慮個人情報」 に入っています(個人情報保護法)。会社などが本人の同意なしに集めることは、原則としてできません。

よくある誤解

  • 「逮捕されたら前科がつく」→ ✕。逮捕は捜査の手続きで、それだけでは前歴。起訴されて有罪が確定して初めて前科です
  • 「罰金なら前科じゃない」→ ✕。罰金も刑罰です。交通違反の罰金も、確定すれば前科です(反則金で済んだ場合は刑罰ではありません。くわしくは罰金と反則金の違い)
  • 「執行猶予なら前科はつかない」→ ✕。有罪判決なので前科です
  • 「前科は10年で完全に消える」→ △。法的な効力は消えますが、記録や事実は残ります
  • 「不起訴なら何の記録も残らない」→ △。前科にはなりませんが、捜査を受けたという前歴は残ります

まとめ

  • 前科=有罪が確定したこと(罰金・執行猶予・略式命令も含む)
  • 前歴=捜査の対象になったこと(逮捕・書類送検・不起訴・微罪処分など)
  • 分かれ目は「起訴されて有罪が確定したか」。逮捕されたかどうかではない
  • 前科は資格・パスポート・選挙権などに影響することがある。前歴は原則として影響しない
  • 刑の消滅で法的な効力は消えるが、事実と記録は残る

罪と刑の流れは書類送検とは、判決のあとの話は執行猶予とはもあわせてどうぞ。

刑の種類と刑の消滅は 刑法(e-Gov法令検索) の9条・27条・34条の2、略式命令は 刑事訴訟法 の461条・470条、前科の記録の扱いは 法務省「犯歴事務規程」、要配慮個人情報は 個人情報保護委員会ガイドライン(通則編)、賞罰欄の裁判例は 仙台地裁昭和60年9月19日判決 で確かめられます(2026年10月23日確認)。

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